給与明細を偽造してキャッシングするとどうなる?定職に就いたばかりの人や小規模商店の店員など、年収の少ない人がキャッシングを利用する場合、往々にして審査の受けを良くしようとして、年収を誤魔化そうとするものです。
ただし、偽造すると大きなリスクを抱えることになります。
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給与明細を偽造する必要のないキャッシング
2006年の改正貸金業法における総量規制によって、全貸金業者からの借入合計額が年収の3分の1を超えることができなくなりました。
従って、仮に年収が300万円の人は100万円が借入の利用上限額になります。
同時に、貸金業者1社から50万円を超える借入をする場合、若しくは他の貸金業者との利用限度額を合計すると100万円を超える場合は収入証明書の提出が義務付けられています。
従って、1社から50万円を超えない、また全社からの利用合計額が100万円に届かない借入額の場合は、給与明細の提出義務が無いため、給与明細を偽造する必要もありません。
給与明細を偽造しなくても総量規制を超えたキャッシングが可能
キャッシングを利用した場合、申込書に記載された内容は全て指定信用情報機関に登録されます。
従って、氏名から家族状況、勤務先、就業形態、年収などの情報は指定信用情報機関に加盟している全貸金業者が確認できます。
そのため、仮にキャッシングの申込書に実際の年収額である240万円と記載すると、その時点で80万円が利用上限額になるため、1社から50万円の契約をした場合は他の貸金業者からは30万円しか借りられません。
ただし、申込書の記載は自己申告であるため、虚偽であっても300万円と記載しておけば、3社から30万円ずつ90万円までは収入証明書を提出する必要が無いため、借入が可能になります。
総量規制における盲点とも言えます。
給与明細を偽造したキャッシングが判明した場合
金額的に収入証明書を必要とするキャッシングをすることで給与明細を提出した後で、偽造が判明すると当然、ペナルティが課されます。
全ての業者のキャッシング規約において、キャッシング契約が成立したとしても、重大な虚偽が判明すれば、即時に契約の強制解約を会社側から申し出ることが可能と規定されています。
当然、借入残高に対しては一括返済を要求されます。
また、指定信用情報機関のブラックリストに事故による強制解約との記録が載るため、以後は全ての貸金業者がその情報を確認することになり、キャッシングやクレジットの利用が全面的に不能となります。
給与明細を偽造したキャッシングが判明した場合の法的責任
給与明細の偽造に対して貸金業者からの訴えがあれば、以下の法的処分を科される可能性があります。
・源泉徴収票や給与明細(企業が発行するもの):私文書偽造
・税務署で届出印を受領した確定申告書(個人作成):私文書偽造
・課税証明、所得証明(役所発行):公文書偽造
処罰の内容は以下になります。
・私文書偽造等の罪(刑法第159条):1年以下の懲役または10万円以下の罰金
・公文書偽造等の罪(刑法第155条):3年以下の懲役または20万円以下の罰金
なお「偽造した」ことと「偽造した文書を使った」ことに対する罪は別にあります。
偽造した文書を使ったことに対する罪状は、「偽造私文書等行使罪」・「偽造公文書等行使罪」が適用されます。
給与明細を偽造したキャッシングが拒否される理由
給与明細を提出する理由は貸金業法に規定されているからだけではなく、利用者の返済能力を判定した上で、妥当性のある貸出金額を決めるためです。
キャッシングの返済は長期間続くことが多いため、安定した収入は必須です。
元々、貸金業法における総量規制というのは自己破産者の多発を受けて、貸金業者に利益重視の貸出を抑制させること、利用者に返済能力以上の借入を防止することを目的として設立されたものです。
また、貸金業者には過去から積み重ねてきたキャッシングの莫大なデータがあり、いくら給与明細を偽造したとしても、年齢や職業、就業形態、勤務先企業、職歴などから妥当な年収を割り出せます。
無駄な画策はしない方が賢明です。
給与明細を偽造したキャッシングではなく、適正な借入が重要
借入で最も重要なことは返済能力に見合った金額だけにするということです。
犯罪行為のようなことをして、キャッシングもクレジットもできなくなったら、それこそ生活に支障をきたします。
また、何らかの理由で勤務先に知られたことによって評価が悪くなれば、将来の人生設計が水泡に帰す危険性もあります。
偽造文書で借入をするなどということは百害あって一利なしです。